顧客の課題、それも潜在的課題を見つける事が、
重要である事は、以前のコラムでも書いたとおりです。

現状に満足していない、もっと良くしたい、と思っているとき、
意識はどうしても、目の前の問題点、顕在的課題の解決に行ってしまいがちです。

製造業の顧客であれば、

「データの検索を早くしたい」
「この作業を効率化したい」
「今回の不具合を解決しなければ」

などですし、消費者で言えば

「ハンディ掃除機の電池の持ちが悪い」
「携帯の操作が面倒だ」

などですね。

これらを解決する事が、
顧客が既に意識している・認識している”顕在的課題”となります。

もちろん、これらの問題点自身はしっかり解決しなければなりませんし、
解決する事で、一定の効果が得られ、
顧客は満足を感じるかもしれません。

でも、本当にそれで良いのでしょうか?

例えば、一時的にトラブルが解決しても、
トラブル発生の要因が残っていれば再発してしまいます。

再発しないためには、”歯止め”を行わなければなりません。
“歯止め”は必ず検討されますが、やはりそれでも再発する事が有ります。

それは、根本のもっと根の深い問題点に対しての課題が解決されていないからです。

BtoCの例でも、

「ボタン操作の回数を5回から3回に減らした」

事で、操作は楽になったかもしれません。
それで満足する顧客もいるでしょう。

でも、本来その操作はもっと簡単にしたくないでしょうか?

アップル創業者の一人、スティーブ・ジョブズは、

 「私に、3回以上ボタンを押させないでくれ」

と言っていたそうです。 かなりの面倒くさがり屋だったのかもしれません。
潜在的には”ボタン何かを押したくない”と思っていたのでしょうね。

しかし、潜在的な・根本的な原因を取り除くことで、
“真の歯止め”となり、同種のトラブルの再発防止になると同時に、
他のトラブルの防止につながることになります。

BtoCにおいても、顧客の”真の要求”に応える事ができ、
iPhoneのような爆発的なヒットにつながるわけです。

でも、”潜在”と言うことは、現状では明確に意識されていないと言うことです。
顧客に聞いても、直接的には出てきません。

顧客の課題はどの様にして見つけるのでしょうか?

いくつかのポイントが有りますが、一番重要なのは、

「顧客の声=真の課題」ではないと意識する

事かと思います。
常に顧客の声の中から、”真の課題=潜在的課題を拾い出す”

と言う意識を持つ事です。


具体的にはいくつなの手法、考え方が有ります。

◎「なぜなぜ5回」「なぜを5回繰り返せ!」

品質保証の基本と言われる「なぜの繰返し」です。
何かのトラブルの原因を「なぜそうなったのか?」の問いを、
“最低”5回は繰り返して、真の原因を探ろうという手法です。

5回にこだわる必要は有りません。
必要であれば10回でも15回でも繰り返すのです。

この手法は、”真の原因”の解明だけでなく、
機能要求の深彫りにも使えます。

何かを解決したい課題があった時、

 「なぜ、その課題を解決したいのか?」

という問いを何度も繰り返す事で、
“真の課題=潜在的課題」を見つけ出すことができます。


◎「目的ー手段」の関係

「目的ー手段」の関係は、VE(バリューエンジニアリング:価値工学)で
使われる基本概念です。
“何かの機能は、何かの目的を達成するための手段”という考え方です。

顧客が認識してい顕在的課題を聞いた後、

「その課題を解決する目的は?」

という問いを投げかけます。
ここで出てきた目的は、”一つ上位の解決したい課題”と言う事になります。

そして、この”上位の課題”に対して、

「その課題を解決する目的は?」

の問いを繰り返していくのです。
それにより、課題はどんどん上位レベルになり、
最終的には、”真の課題=潜在的課題”をあぶりだすことになります。

 

「なぜなぜ5回」も「目的ー手段」の手法も、
期待するところ、基本の考え方・目的は同じです。

但し、「なぜなぜ5回」の方が少し原因追求型で、
「目的ー手段」の考え方の方がより広い潜在的課題の発見
近いかといえます。

いずれにしろ、顧客の声=要求を鵜呑みにせず、
問いを繰り返して、潜在的課題をあぶりだすことで
顧客の”真の満足”が得られる事になります。