【電子回路のVE: 部品境界】
前回は、「反転増幅器の機能系統図」を示しました。
部品の機能表現から、どちらかと言うと
bottom upで積み上げたと言う感じでした。
でも出来上がった機能系統図を見ると、
反転増幅器の動作原理を良く表していることが判ります。
これこそが、機能系統図の利点でしょう。
さて、実装する部品の”境界”について考えます。
電子回路で使用する部品は、ほぼ市販されている”標準部品”です。
従って、VE的に上位機能から代替案を考えていっても、
実装段階では”標準部品”になってしまうことが、
電子回路VEを難しくしている要因の一つでも有ります。
しかし、ここで「部品の境界」を無くして考える事で、
“実装”の世界から、”機能”の概念の世界に移る事ができます。
この“概念”の世界に移ることは、
上位機能での思考に繋がる事になり、
とても重要なことです。
それでは、電源ICを例に”部品境界”を考えて見ます。
良くある、電源ICは外付けの抵抗で出力電圧を決める事ができます。
〇V出力のためには、△Ωを使います。
外付け抵抗は当然電源ICの外で別部品です。
しかしながら、”機能”としてみたときはどうでしょうか?
外付け抵抗が本当に出力電圧を決めているのでしょうか?
それには電源ICの中を見て見ます。
電源ICの中には、リファレンス電圧発生ブロックが有り、
エラーアンプブロックが、フィードバックされた電圧と
リファレンス電圧を比較して、出力電圧を決めています。
つまり、出力電圧を決めているのは、
“外付け抵抗”だけでなく、
リファレンス電圧発生ブロックと
エラーアンプも関係しています。
従って、”出力電圧を決める”機能は、
- 外付け抵抗
- リファレンス電圧発生ブロック
- エラーアンプ
なのです。
これを機能系統図で表してみます。
すると、途中に
- [出力電圧を分割する]
- [分割電圧をフィードバックする]
結局[Voutを決める]と言う機能は、
電源ICの一部と外付け抵抗が関係した機能となり、
部品境界を跨った機能と言う事になります。
一度部品の境界を取り払って、
実体から概念の視点になることで、
より上位の機能と結びつきます。
そして、より上位の機能で、
代替案を考える事により、
抜本的な改善が可能になる、という
VEの良いところに繋がります。