【電子回路のVE: 電子部品と機能(3)】
前のコラムでは、「分圧回路の機能系統図」を示しました。
ただ、余りに簡単・シンプルな”回路”だったので、逆に判りにくい所も有ったかと思います。
今回は、もう少し複雑な回路を例にして、部品の機能と機能系統図の関係を示していきます。
と言っても、オペアンプを使った「反転増幅器」です。
基本回路の部品は、抵抗2つとオペアンプ1個で、
回路設計者なら、誰もが知っている回路です。
この回路に関して、VE的に”機能”で考えてみる事により、
「回路を機能で捉えていく」感覚を少しずつ作り上げていきたいと思います。
まずFig.1が「オペアンプを使った非反転増幅器」の回路です。
要点としては、
- オペアンプは、ゲイン=∞、入力抵抗=∞ と考える
- 出力Voutは、-Vin * Rout/Rin となる
- オペアンプの-端子側は、仮想接地される
です。
動作として、
- ゲイン=∞ より オペアンプ入力端子間電圧は ゼロになる
- +端子は、接地されているので、-端子も電位差無しの接地された電位となる
- オペアンプの入力端子抵抗は∞のため、VinからRinを流れた電流は全てRoutを流れる
- 出力電圧は、Routでの電圧降下で決まり、Vout=-Vin*Rout/Rinとなる
と言うのは、皆さん良くご存知の通りです。
ではこれを“機能”で考えて行きます。
各部品の役割=機能を示したのがFig.2です。
(仮想部品w=+端子接地の0Ω抵抗 と見做します)
そして、反転増幅回路のF0は、
F0=「Vinを -Rout/Rin倍した電圧Voutを 出力する」
です。
これら機能から、機能系統図を組上げて行きましょう。
すると、「反転増幅器」の動作の肝である”仮想接地”については、
- +端子が接地されている
- オペアンプの増幅率が∞
から来ている=”仮想接地の手段”と見る事が出来ます。
従って、「-端子を仮想接地する」という新たな仮想の機能を定義する事で、
二つの”部品の機能”の上位機能となります。
そしてこの仮想接地と、二つの抵抗の機能から、
「出力電圧を決める」というF0を目的とする重要な機能を見出す事になり、
F2として新たに定義できます。
F1として、オペアンプの「電流(電圧)を出力する」と合わせて、
F0の手段となる機能になっています。
さて、こうして組上げた機能系統図ですが、
何か、文章・箇条書きでの説明とは別な形で
「反転増幅器」の動作を説明しているという感じがしませんか?
これは、”機能”で考えて、その機能の役割=目的を視点に
機能を組み替えたのですから、有る意味動作の説明になっているのは当たり前とも言えます。
機能系統図により、回路の動作の説明になり、回路を理解する一助になっていると思いませんか?
如何でしょうか?
今回は、皆さんが良く知っている「反転増幅器」を例にしましたが、
「部品の機能」と「機能系統図」が、何となく繋がりそうでしょうか?