ある産業用機器の製造工場の
コンサルティングに行った時のお話です。
その企業は40年前から工場などで使われる
装置を生産・販売しています。
既に新機種にはなっているのですが、
当初のVersionの機器が、まだ世界中に2万台も現役、
まだまだ、メンテナンスして使い続けたいという
顧客も多いそうです。
これは、その企業の大きな財産・強みです。
ただ、40年ともなると、問題も多数出てきます。
部品供給・入手性です。
40年前の技術、入手部品で作られていますから、
当時は普通の部品であっても、
今ではとても特殊な部品が使われていたりします。
実際、(今では)特殊なスイッチやトランジスタなど。
UJT(Uni Junction Transister)って、
私も初めて見ました!
ネットなどで調べても、なかなか見つかりませんし、見つかっても高価!
ある時は、某国から購入したら、
正常品が200個中に10個余りしかなったことも。
こうなると、メンテナンス・継続使用希望の
顧客へのサポートにも、支障が出てきます。
企業側でも認識していて、
課題を
”これらの特殊な部品の確保”
として対応しようとして来ましたが、
なかなか解決できていない、
というのが現状でした。
今回のコンサルティングでは、
まず、機器を実際に見て触らせてもらい、
回路図や機構図を頂いて、
動作を大まかにですが理解することを進めました。
その中で、問題のスイッチの所にたどり着きました。
その時の私の質問は、
”この部品・ユニットの目的は?”
です。
担当者は、少々虚を突かれた感じでしたが、
話を進めると、
”モーターの回転数と回転方向を知ること”
なのが、判りました。
つまり、課題は、
”回転数/回転方向を知る手段を確保する”
だったわけで、認識する課題レベルを
上位に上げた、と言えます。
VE的に言うと、
〇回転数/回転方向を伝える
という機能の実現手段として、
特殊なスイッチが使われていたわけです。
当時はそれが、最適な解だったのでしょう。
”回転数/回転方向を伝える”という機能を
実現する手段は、たくさんあります。
その場で担当者と話をしていき、
実用的実現可能な案として、
「フォトインタラプタを使う」
という方向で検討していくことになりました。
信号を受ける基板側のI/Fを見ると、
実は単にOn/Off信号で受けていることが
判ったので、基板側はそのままで、
ユニット・部品側の工夫で入れ絵は可能との
判断になっています。
今回は、割と判りやすい例となりましたが、
機能本位、目的指向で、課題レベルを上位にすることで、
解決することが出来ました。
40年も経つと、進歩する技術の一方で、
すたれていく技術・物が出てきます。
電子部品に限らず、数年・数か月の寿命の
製品・部品が有り、設計時の選択には苦労します。
それでも、ユニット・部品の機能を
しっかりと認識・把握しておくことで、
代替手段への置換えをやり易くしておく、
ということは可能でしょうし、
設計として必要でしょう。
そのような考慮・配慮が出来る技術者が
より求められる、必要とされているのではないかと
思います。
機能本位、目的指向は、ある程度の
訓練・練習をすることで、身に付いてきます。
自分自身がその思考を常にすることと共に、
コンサル先の技術者に、この思考を
広めていきたいと思います。